葬送
祖母が亡くなった
母方の祖母だ、自分は彼女から名前の一字を頂戴している
そして彼女以外の祖母、つまり父方の祖母は自分が生まれる前に亡くなっているので実際におばあちゃんとして慣れ親しんでいたただひとりのひとだ
二十八日の早朝に息を引き取り、二十九日の晩に通夜、三十日の正午前頃から葬儀と、冠婚葬祭が今年度はあわただしいかぎりだなあと思わずにはいられない
残念ながら彼女に特別に心を砕いて気落ちするような関係性は現在すがたをなくしてしまっていたので、大袈裟でなく悲壮感はなりをひそめている
ただ近親者として思うこととして相応しいのかよくわからずに、彼女の最後の意識について思いをはせたりはしてみたりもした
認知症をわずらっていたので、最後は何を考えながら息をひきとったのだろう
孫である自分や弟のことはよぎってはいないだろう
祖母は母を一度育児放棄していると母から散々きかされていたけどそういう間柄の母に入院生活を看病されることについてはどう感じていたのだろう
自分の死後の財産に娘がすがっていることについてどう思っているのだろう
云々
老人が生を全うして目を閉じて動かない姿には何の未練も後悔も辛苦もない
これだけ生きて満足だっただろう
彼女はこどものころ、どんな子供だったのだろう
そして、娘盛りのころは、今の自分の年頃のときは、何に心を移す少女であり、女性であったのだろう
背景が見えないままだった気がする
このひとは生まれた時から老人だったわけではないのに、自分は身勝手にそう解釈していてそこから自分の発想を動かすつもりがないのでなんだか素っ気無さに無情だとなじりたかった
確実に血を受け継いでいるひとがなくなったというのに
もうすこしドラマティックな感情にはならないものなのだなと、自分を買い被る
昨日の朝は雨が降っていて、葬式の進行をしてもらった女性が上手にそれをマイクで話に交えていた
母には少しショックだったのだろうな、母に気を遣う自分が想像できなくてなにをしたらいいのかよくわからなかった
何かおいしいものをもっていってあげたらいいのだろうかと思うがあの年代はなにがすきなのかいまいちわからない
火葬場には猫がいた
泣きはらした顔を無防備にさらして呆然とした様子で親族につれられる若い女性もいた
遺体を焼いたあとに残った骨があまりにも脆い、こんなにも脆いものなのだと感心した
これからいろんなひとが死んでいく、そういうことを受け止められるようになっているのか不安だ
自分は、強くなろうとしなかった人間にほかならないからだ